健康診断結果の経年変化に視点をおいた望ましい健診結果の活用と事後措置のあり方に関する研究

分担研究報告⑤

健康診断事後措置の評価指標 産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健経営学研究室 永田 智久

1.健診事後措置の目的

産業保健は、健康状態と仕事との適合をはかることが大変重要な目的です。健康診断は、職務適性を評価するうえで重要な機会となっています。健康診断結果から、就業上支障のない健康状態であるか否かについて判断を行います。そのほかにも、治療が必要な人をしっかりと受診・受療につなげること(受診勧奨)、また、食事・運動指導等の保健指導や受診・受療が適切に継続されるよう支援する等の介入を行うことで疾病管理を良好に保つことが重要な目的です。

2.健診事後措置の評価指標

健康診断は毎年、実施されます。そのため、健診事後措置が適切に実施され、その目的が達成できているかを評価しましょう。その際の評価指標で有効なものに、CC(Crude Coverage)、EC(Effective Coverage)というものがあります。これは、2003年にWHOが提唱し始めた、保健事業評価のための新しい指標です。

定義は以下の通りです。CCは、サービス対象者の中で、実際にサービスを利用している者の割合です。ECは、サービス対象者の中で、健康上の便益を獲得している者の割合です。具体例では、サービス対象者は健康診断の要受診者、サービス利用者は要受診者の中で医療機関に受診した者、健康便益獲得者は要受診者で医療機関に受診した者の中で疾病のコントロールが良好となった者です。

図

3.健診事後措置の基準値の設定方法

健診事後措置をCC、ECを用いて評価するためには、基準値を設定する必要があります。基準値は、必ずこの値にしなければいけないという絶対的な基準はありません。そのため、目的に応じて決めていくことになります。例えば、血糖の基準では、空腹時血糖とHbA1cの両方のデータがある場合はその組み合わせで設定することができますが、空腹時血糖しかデータがない場合にはそれのみで基準を設定することが可能です。なお、サービスを利用したかどうか(受診したかどうか)は、特定健診・特定保健指導のマニュアルに記載されている「標準的な質問票」のなかに、血圧を下げる薬、インスリン注射又は血糖を下げる薬、および、コレステロールを下げる薬の使用の有無に関する質問が含まれており、この設問を活用することで受診の有無を把握することができます。 血圧と血糖の基準値の設定の一例を示します。

血圧
血糖

4.ベンチマークの活用方法

CC、ECの基準を使うことで、企業間や事業所間での評価を比較することが可能です。図は血圧のCC、ECを事業所間比較したものの具体例です。CCとECはいずれも高い方が良好な指標であるため、良好な事業所ではどのような取り組みをしているかを検証し、良好事例を他事業所に水平展開する、という取り組みを進めることが推奨されます。

報告書

こちらをご覧ください

ページトップへ